CASE STUDY 導入事例

VOC対策・溶剤回収装置を軸とした環境プラント装置の企画・設計・製作 システムエンジサービス株式会社 様

写真左から:
取締役 プロジェクト部 部長 三枝 元行氏、プロセス技術部 部長 稲川 展裕氏、代表取締役 能智 将博氏、弊社営業部 岩谷 飛路人

システムエンジサービス様(以下「SES様」)は「シリカゲルを使用したVPSA方式」という独自の吸着技術(特許取得済)を用いた揮発性有機化合物(VOC)回収装置を企画・設計・製作する企業です。排ガス中の溶剤を回収して再利用することで、ご需要企業様のコスト圧縮、ムダの削減を達成しながら、大気に放散されるVOCの排出抑制に力強く貢献する企業です。取り扱う液が有機溶剤ですから、わずかな漏洩も許されません。
溶接線の1本1本まで検査をするようなプラント設備の液送ポンプに三和ハイドロテック製マグネットポンプが使われています。

有機溶剤ガス回収装置(ダウンサイジングモデル)

炭化水素ガスから有機溶剤、重合物質の回収・再利用へ

Q. SES様の製品開発について伺えますでしょうか。

取締役 プロジェクト部 部長 三枝 元行氏

三枝部長:当社は、1997年からVOC回収装置の販売を開始しました。販売当初は主に炭化水素系VOC回収、つまりは製油所、ガソリン貯蔵基地におけるVOC対策用の回収装置を製作していました。時代が進むにつれ、石油元売り業界は統合が進み、1980年代には10社あった企業が現在ではENEOSホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングスの3社になっています。統合されたため、数量は減少傾向にありますが、装置の規模は自動車3・4台分程度の小型の装置から全高10mを超えるほぼプラントと呼べるような大規模な装置まで顧客の要望に合わせたVOC回収装置を供給しています。

Q. 回収率はどれぐらいなのでしょうか。

三枝部長:約95~99.9%です。例えば、ガソリンのローリー出荷時に発生するガソリンベーパーを液回収した場合で考えてみると、1日の平均ローリー積み込み量:500kL/dayとして年間平均で約180kLが揮発します。今はもうちょっと高いですが、180円/Lですとロス分の金額は約3300万円になります。これが99%回収できるとすれば・・・

――お得ですね!

Q. ガソリンからスタート、ということは別の分野にも進出されているのでしょうか。

三枝部長:はい、近年は石油化学や化学工場を対象としたVOC回収装置へと比重が移っています。簡単に言うとガソリンから有機溶剤回収へと変化しています。VOCの排出濃度を遵守するだけでなく、弊社の装置は回収した溶剤の分解、劣化が少ないという特徴があります。これにより、蒸留等の後処理をすることなく再利用されているお客様も少なくありません。また、窒素雰囲気中の溶剤成分を除去することで窒素ガスの純度を上げて再利用されているお客様もいらっしゃいます。

Q. 回収するものがガソリンや揮発性有機溶剤ですと液送には相当気をつかいそうですね。

三枝部長:その通りです。そこで、三和ハイドロテックさんの取り扱っているシールレスマグネットポンプが必要になってきます。

Q. 三和製ポンプをご採用いただいたきっかけは何だったのでしょうか。

三枝部長:ある石油精製プラントで交換用ポンプが欲しい状況の中、すでにそのポンプはなくなってしまっていました。すぐにでも欲しい状況だったのですが、三和製ポンプなら即納出来る!ということで導入したのがきっかけです。

Q. 規格品をラインナップし、素早く需要にお応えしようとする体制が奏功したようです。
はじめて使っていただいた感想はいかがでしたか。

三枝部長:ずいぶん、コンパクトに感じました。これで大丈夫かな…ってはじめは不安になるぐらいでしたね(笑)。でも、小さくても全然問題なく動く。動くことがわかれば、コンパクトなことは大きなメリットになります。大きいと設計が限られてきますし、メンテナンス時にも重い。そもそも、三和製ポンプはメンテナンスすることないのですが。

シリカゲルへの吸着にこだわった溶剤回収装置

Q. 御社の特長であるVPSA方式による溶剤回収(特許)についてお教えください。

プロセス技術部 部長 稲川 展裕氏

稲川部長:そちらについては、私からお答えします。VPSA方式とは以下の文言の略なのですが、2本の吸着塔を用いて吸着を大気圧、脱着を真空下で行う方法です。vol%単位の高濃度VOCガスをそのまま処理可能で、しかも低発熱で排水処理が不要という画期的なVOC処理技術です。

VPSA方式
VPSA方式の基本的なシステム構成

Q. 従来の方法と大きく違うところはどこでしょうか。

稲川部長:吸着剤に「活性炭」ではなく「シリカゲル」を採用している点です。一般的に活性炭はVOC吸着能力の高さからVOC対策によく用いられます。しかし、局所的な発熱や活性炭自身が可燃物であるため発火のリスクが少なくありません。そのため、活性炭を使用する際には活性炭層の温度管理や爆発下限界の50%以下まで希釈する必要があります。また、脱着にスチームを用いることから別途排水処理設備が必要になります。
これに対し、シリカゲルは不燃物です。局所的な発熱や爆発のリスクが極めて少ないことから爆発下限界以上の高濃度ガスもそのまま処理することが可能です。吸着剤の寿命も長く、10年以上交換せずに稼動している実機も多数あります。また、溶剤の回収率も高く、乾式システムなので排水処理の心配も不要です。

Q. 回収可能なVOCにはどのようなものがありますか。

稲川部長:ガソリンから、ケトン類、アルコール類、トルエンやベンゼンなどの芳香族まで多種多様なVOCの回収が可能です。また、反応性が高い重合性物質(モノマー)についても多数の回収実績があります。

Q. VOCの回収はどのようにされるのでしょう。

稲川部長:シリカゲルに吸着したVOCを真空ポンプで吸引するとVOCが濃縮されます。この濃縮ガスを冷却することでVOCが液化します。回収液が溜まると自動的に液ポンプで系外へ払い出します。

Q. そこで三和製ポンプが使われると思いますが、採用のメリットはどこにあるでしょう。

稲川部長:ノートラブルが最大のメリットです。このポンプを使ったら、他のものは使えなくなります。以前使用していたポンプも無漏洩ポンプでしたが、そちらはベアリング関係などにトラブルが発生しました。「マグネット」「シールレス」という点で三和製ポンプを選択しましたが、回収ポンプ関係のトラブルはゼロになりました。イニシャルコスト的には少し高いかもしれませんが、遠隔地に装置を設置することが多い私たちにとって、このメリットはとても大きいと考えています。

環境対策のため、世界中にVPSA溶剤回収装置をひろめたい

Q. これからのシステムエンジサービス様のビジョンをお聞かせください。

代表取締役 能智 将博氏

能智代表:そちらについては私からお話ししましょう。シリカゲルを使用した当社溶剤回収装置は国内では130箇所、中国では60箇所を設置しました。その他、東南アジア諸国を中心に海外需要が広がっています。現在、私が感じていることは、「この装置は環境保護に大きく役立つ」ということです。一般の人に知っていただく機会は少ないのですが、世の中の環境負荷を減らし、社会から求められるということを肌で感じています。私は、石油・化学プラントのあるところ、この装置を日本だけではなく世界にひろめ、産業と環境保護の両立に役立ちたいという思いがあります。

Q. 海外での環境保護意識とはどのようなものでしょう。

能智代表:国内のVOCの排出基準値は各種法規によって異なりますが、2006年の大気汚染防止法の改正以降、国内のVOC排出基準値は大きく変わっていません。これに対して海外はより厳しい排出基準値を採用し始めました。それだけ海外の方が環境保護に対する意識が高まっていると考えられます。

代表取締役 能智 将博氏

Q. 装置の海外需要において、三和製ポンプはどのようにお役に立っていますか。

能智代表:壊れないこと、これがとても大きな利点です。ずいぶん以前のお話になりますが、三和製ポンプを採用する前は、メンテナンス時に確認するとポンプはだいたい壊れていました。今では、ベトナム、シンガポール、インドネシアでも当社装置が稼働しています。このような遠い海外で、もし故障したらたいへんです。故障の危険性を孕むポンプを採用するということは交換時期を意識しなければなりません。予備機も準備しておく必要があります。しかしその点、三和製ポンプは交換時期は意識しなくていいのです。

Q. 予備のポンプヘッド1個は置いて頂ければと思います(笑)。それだけで大丈夫です。

VOC-VRU(不活性ガス中の揮発性有機溶剤ガス回収装置)での採用例

能智代表:壊れない=安全操業は次の案件にもつながります。逆に、装置が止まると操業停止にもつながりかねません。当社は溶剤回収装置だけでなく、関連する配管、タンク製造、電気計装などの一般工事も行っていますが、そこでポンプの需要があれば三和製ポンプを選びます。

Q. その他に三和製ポンプの利点があれば教えてください。

能智代表:そうですね、能力に比べて「小さい」ことでしょうか。当社はヒアリングの上、装置の設計段階から参加します。お客様の環境は千差万別ですが、敷地面積だけはだいたい決まっています。そのような背景の中で設計するときポンプが小さいとラクです。「どうにか入る」「大きさは特に気にしなくても大丈夫」というところは助かります。また、納入した装置は図書管理も行います。三和ハイドロテックさんは、仕様、ミルシート、実績、書類も大丈夫ですね。

Q. 受賞おめでとうございます。

画期的な溶剤吸着方式の発明、厳しい基準と検査、高い安全性のポリシーで多くの実績を積み重ねられた結果、「令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」にて、能智 博史会長が科学技術賞を受賞されました。誠におめでとうございます。

能智代表:ありがとうございます。おかげさまで令和3年度の千葉県科学技術功労賞選出に続いて、文部科学大臣賞の受賞となりました。私たちの技術が日本の経済、国民全体の社会生活向上に貢献できるという自信につながりました。これからも、グローバル規模で環境貢献できる装置を造り続けたいと思います。

令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰。受賞に伴う市長表敬訪問
(写真中央:受賞された能智 博史会長)

――ご協力、たいへんありがとうございました。

別視点より

今回のインタビューとは関係なく、Sanwapumpをご採用いただいている大手素材メーカーのプロジェクトマネージャー様とSES製排ガス装置についてお話しをする機会がありました。ベトナム、インドネシアで稼働中の同社製排ガス回収装置について大絶賛で、「100ppm狙いではなく、はじめから7ppm以下が目標。でも実際は2ppmぐらいしか排出していない。大きさも従来のものとは全く違うほどコンパクトなのに回収能力も高い。」と、効率の良さに感心されてました。よい製品は、誰からも認められるものですね。

システムエンジサービス株式会社様 採用製品

ステンレス製マグネットポンプ

  • メカニカルシールがないため、シール水不要
  • メンテナンス性が大幅に向上
  • 接液部と駆動部が完全分離しているため液漏れ無し
  • 省スペース設計に貢献

マグパックシリーズ

マグネットポンプ「マグパック」シリーズ MP型

型式名 MP8415
材質 SCS13(SUS304)製
モーター
仕様
7.5kW × 2P 400V/60Hz
防爆等級d2G4
仕様 417L/min(25m3/h) × 40m
取合い 吸込 80mm / 吐出 40mm
JIS10kRF フランジ
外形寸法 幅(ベース部) 250 × 高さ 377 × 奥行き 730 mm
重量 161kg

カスケードマグネットポンプ MSW型

型式名 MSW251
材質 SCS14(SUS316)製
モーター
仕様
1.5kW × 2P 400V/50Hz
防爆等級d2G4
仕様 16.7L/min(1m3/h) × 40.8m
取合い 吸込 25mm / 吐出 25mm
Rcネジ
外形寸法 幅(ベース部) 160 × 高さ 215 × 奥行き 513 mm
重量 69kg

インタビューに答えてくださった企業様

有機溶剤ガス回収装置(ダウンサイジングモデル)

システムエンジサービス株式会社

所在地:
〒262-0033 千葉市花見川区幕張本郷7丁目21-26
サイト:
https://www.system-eng.co.jp/

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